甲状腺機能亢進症の治療選択肢とは?わかりやすく解説

「動悸がする」「体重が急に減った」「汗が止まらない」
こうした症状が続いている方は、甲状腺機能亢進症(こうしんしょう)かもしれません。

今回は、甲状腺機能亢進症の治療方法について、立川市の「はごろも内科小児科」が医学的に正確かつわかりやすくご紹介します。


目次

甲状腺機能亢進症とは?ホルモンが過剰に出る病気

甲状腺は首の前側にある小さな臓器で、全身の代謝を調整する「甲状腺ホルモン」を作っています。
甲状腺機能亢進症は、このホルモンが過剰に分泌される状態
のことを指します。

代謝が活発になりすぎるため、体にさまざまな負担がかかります。


主な症状

  • 動悸、息切れ
  • 体重の急な減少(食欲はむしろ増える)
  • 暑がり・発汗過多
  • 手のふるえ
  • イライラ、不安感、不眠
  • 生理不順
  • 首(甲状腺)の腫れや違和感

日常生活に支障をきたすことも多いため、早めの診断と治療が重要です。


代表的な原因はバセドウ病

甲状腺機能亢進症の多くは、バセドウ病(自己免疫疾患)が原因です。
自己免疫の異常により、甲状腺が過剰に刺激されホルモンを作りすぎてしまいます。

その他、以下のような原因もあります:

  • 甲状腺炎(ウイルス性・無痛性)
  • ホルモンを出す腫瘍(腺腫)
  • 過剰なヨウ素摂取 など

糖尿病との関係にも注意が必要

甲状腺ホルモンは血糖値の調整にも関わるため、糖尿病のある方は特に注意が必要です。

  • 甲状腺機能亢進症では、血糖が上がりやすく、糖尿病のコントロールが悪化することがあります。
  • 逆に、糖尿病の薬の効き方が変わることもあります。

したがって、糖尿病で治療中の方は、甲状腺の検査も併せて受けることが望ましいです。


甲状腺機能亢進症の治療法:3つの選択肢

治療は、以下の3つの方法から選ばれます。
患者さんの年齢や生活状況、症状の強さによって最適な方法を相談して決めます

1. 薬物療法(抗甲状腺薬)

最も一般的な治療方法です。

  • 使用薬:メルカゾール®(チアマゾール)、プロパジール®(プロピルチオウラシル)
  • ホルモンの産生を抑える薬で、数か月〜数年かけて体調を安定させます。
  • 副作用(肝機能障害・白血球減少)に注意しながら、定期的な血液検査が必要です。

2. 放射性ヨウ素治療

  • 放射線を出すヨウ素をカプセルで服用し、甲状腺細胞の働きを弱める治療です。
  • 欧米では一般的ですが、日本では慎重に用いられています。
  • 妊娠予定のある方や授乳中の方には不向きです。

3. 手術(甲状腺の一部または全部を切除)

  • 薬が効きにくい場合や、甲状腺の腫れが大きく圧迫症状がある場合に選ばれます。
  • 手術後は、甲状腺ホルモンの補充が必要になることがあります。

どの治療法を選ぶべきか?

選択のポイントは以下の通りです:

比較項目薬物療法放射性ヨウ素手術
即効性
再発リスク△(再発あり)△~○△(再発なしだが補充必要)
妊娠・出産への影響×
通院回数△(定期検査必要)○(1回~数回)△(術後経過観察)

患者さんの体質・ライフスタイル・将来の希望に応じて、当院では丁寧にご相談させていただきます。


日常生活で気をつけたいこと

治療と並行して、以下の点に気をつけると、体調の安定に役立ちます。

  • ストレスをためすぎない(自律神経にも影響)
  • 適度な運動と十分な睡眠
  • 刺激物(カフェインや辛い食べ物)を控えめに
  • 定期通院と血液検査の継続

よくあるご質問(Q&A)

Q. バセドウ病は治りますか?
A. 適切な治療により、症状はコントロール可能です。完治する方もいますが、長期間の治療が必要な場合もあります。

Q. 治療中に妊娠しても大丈夫?
A. 薬の種類や状態によって対応が異なります。妊娠を考えている方は、必ず医師にご相談ください。


まとめ|症状に気づいたら、早めの受診を

甲状腺機能亢進症は、放っておくと心臓や骨、血糖にまで影響が出る病気です。
特に、糖尿病や更年期、疲れやすさを感じている方は、甲状腺の異常が隠れている可能性もあります。


甲状腺や糖尿病のご相談は、「はごろも内科小児科」へ

当院では、糖尿病・甲状腺疾患・生活習慣病の診療に力を入れています。
「最近体調が変だな」と感じる方は、お気軽にご相談ください。
地域のかかりつけ内科として、安心と信頼の医療を提供いたします。

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この記事を書いた人

はごろも内科小児科【糖尿病 高血圧 内分泌 甲状腺 在宅医療】 
院長 田丸新一(Shinichi Tamaru)
医師、医学博士

立川市、国立市を中心とした地域医療を展開する、はごろも内科小児科院長。
2004年自治医科大学医学部医学科卒業。高知県県立中央病院、国保沖の島へき地診療所所長、本山町国保嶺北中央病院内科医長を経て、東京医科大学病院 糖尿病・代謝・内分泌内科助教。東京医科大学大学院医学研究科社会人大学院入学。東京大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科。二次性高血圧の機械学習モデルでの研究により医学博士取得。東京北医療センター糖尿病内科、山王病院 糖尿病内分泌代謝内科副部長、東京医科大学病院糖尿病・代謝・内分泌内科助教を歴任。医学の研究も積極的に行ってきた。

日本内科学会 内科認定医、総合内科専門医・指導医
日本糖尿病学会専門医・指導医
日本内分泌学会 内分泌代謝内科専門医・指導医
日本肥満学会所属
東京都難病指定医、東京都小児慢性特定疾病指定医
厚生労働省臨床研修指導医講習修了
緩和ケア研修会終了

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