糖尿病性腎症とは?検査と治療法をはごろも内科医が解説

糖尿病は、血糖値が高い状態が続くことで全身の血管にダメージを与える病気です。その影響は目や神経だけでなく、「腎臓(じんぞう)」にも深刻なダメージを与えることがあります。

今回は、糖尿病性腎症のしくみや検査、そして治療法について、わかりやすく解説します。


目次

糖尿病性腎症とは?

糖尿病が続くことで、腎臓の細い血管が傷つき、老廃物をうまく排出できなくなる病気です。進行すると、腎臓の働きが低下し、「人工透析」が必要になることもあります。

日本では、人工透析が必要になる原因の第1位がこの糖尿病性腎症です。


糖尿病性腎症はどうやって進行するの?

腎症は自覚症状がないまま、ゆっくりと段階的に進行します。主に以下のように分類されます。

  1. 初期(第1期~第2期)
     尿検査でわずかな「アルブミン」が検出されるが、自覚症状はなし。
  2. 中期(第3期)
     尿中のたんぱくが増え、腎機能が徐々に低下。
  3. 後期~末期(第4期~第5期)
     腎機能が著しく低下し、透析や腎移植が必要になることも。

初期にはどんな症状が出る?

残念ながら、初期の糖尿病性腎症にはほとんど自覚症状がありません。気づいたときにはすでに進行しているケースもあるため、早期発見がとても重要です。

進行すると以下のような症状が現れることがあります。

  • 足や顔のむくみ
  • 倦怠感(体がだるい)
  • 食欲低下
  • 尿が泡立つ
  • 血圧の上昇

検査方法:どんな検査でわかるの?

糖尿病性腎症の発見には、定期的な検査が欠かせません。主な検査項目はこちらです。

● 尿検査(アルブミン尿)

腎臓から漏れ出す「アルブミン」というたんぱく質の量を測定します。初期の異常を見つけるカギになります。

● 血液検査(クレアチニン、eGFR)

腎臓のろ過能力を調べる検査です。年齢にもよりますがeGFRが60未満になると、腎機能の低下が疑われます。

● 血圧測定

腎症の進行を早める大きな要因のひとつが高血圧です。


糖尿病性腎症の治療法

治療の基本は、血糖・血圧・脂質の管理と、腎臓への負担を減らす生活習慣の見直しです。

1. 血糖コントロール

血糖値を安定させることで、腎臓の負担を減らします。HbA1cを医師と相談しながら目標設定します。

2. 血圧の管理

目標は130/80mmHg未満とされることが多く、必要に応じて降圧薬(ARBやACE阻害薬など)を使用します。

3. 食事療法

たんぱく質や塩分を控えめにすることで、腎臓の働きを守ります。管理栄養士の指導が役立ちます。

4. 禁煙・適度な運動

血流の改善や合併症予防のため、生活習慣の改善が大切です。


糖尿病性腎症を予防するには?

● 定期検査を受けましょう

症状が出る前に見つけるには、年1回の尿検査・血液検査が大切です。

● 血糖と血圧の管理がカギ

糖尿病と診断されたら、内科での継続的な管理が非常に重要です。

● 生活習慣の見直しも

食事や運動、睡眠など、毎日の積み重ねが腎臓を守る第一歩です。


まとめ:腎臓を守ることが、将来の健康につながります

糖尿病性腎症は、自覚症状が出にくく、放置すると透析に至る可能性のある合併症です。ですが、早期に見つけてしっかり対策すれば、進行を防ぐことができます。

『はごろも内科小児科』では、糖尿病の定期検査や生活指導を通じて、腎臓を守るお手伝いをしています。不安な方はお気軽にご相談ください。


よくある質問(Q&A)

Q. 透析が必要になるのはどんな時?
A. 腎機能が大きく低下し、老廃物を体の外に出せなくなった時に必要となります。早期の対策で避けられる可能性があります。

Q. 腎症は治りますか?
A. 一度傷んだ腎臓の機能は戻りにくいため、進行を防ぐことが最大の治療となります。


ご相談は『はごろも内科小児科』へ

糖尿病の治療はもちろん、腎症やその他の合併症予防にも対応しております。
地域のかかりつけ内科医として、みなさまの健康をしっかりサポートいたします。

検査やご相談をご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

はごろも内科小児科【糖尿病 高血圧 内分泌 甲状腺 在宅医療】 
院長 田丸新一(Shinichi Tamaru)
医師、医学博士

2004年自治医科大学医学部医学科卒業。高知県県立中央病院、国保沖の島へき地診療所所長、本山町国保嶺北中央病院内科医長を経て、東京医科大学病院 糖尿病・代謝・内分泌内科助教。東京医科大学大学院医学研究科社会人大学院入学。東京大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科。二次性高血圧の機械学習モデルでの研究により医学博士取得。東京北医療センター糖尿病内科、山王病院 糖尿病内分泌代謝内科副部長、東京医科大学病院糖尿病・代謝・内分泌内科助教を歴任。医学の研究も積極的に行ってきた。立川市、国立市を中心とした地域医療を展開する、はごろもないか小児科院長に就任。


日本内科学会 内科認定医、総合内科専門医・指導医
日本糖尿病学会専門医・指導医
日本内分泌学会 内分泌代謝内科専門医・指導医
日本肥満学会所属
東京都難病指定医、東京都小児慢性特定疾病指定医
厚生労働省臨床研修指導医講習修了
緩和ケア研修会終了

目次