血液からiPS細胞をつくる|病気の仕組みを調べる基礎研究

糖尿病の中には、遺伝子の変化や、体に脂肪を蓄える仕組みの異常など、珍しい原因によって起こるものがあります。体の中で何が起きているかを詳しく調べるには、病気に関わる細胞を実験室で観察する方法が役立ちます。田丸新一院長が東京大学大学院医学系研究科の糖尿病・代謝内科に所属していたときに参加した共同研究は、その研究に使うiPS細胞のつくり方を検討したものです。
目次
採血で得た細胞から、研究に使う細胞をつくる
体の細胞は、血液や皮膚など、それぞれの役割を持っています。特定の因子を働かせて細胞の性質を変えると、さまざまな種類の細胞へ分化できる状態に戻せます。こうしてつくる細胞がiPS細胞です。
この研究では、採血した血液の中にわずかに含まれる「CD34陽性細胞」に着目しました。血液の細胞のもとになる細胞の一群で、研究ではその細胞を集めてiPS細胞をつくりました。
因子を届けたあとに残りにくい仕組み
研究チームは、細胞の性質を変えるための因子を届ける道具として、センダイウイルスをもとに設計した「ベクター」を使いました。導入後にベクター由来の遺伝情報が細胞内から消えるよう工夫し、患者さん由来のiPS細胞株を作製できることを示しました。細胞株とは、研究で繰り返し使えるように培養して維持する細胞の集団です。
糖尿病の研究にどうつながるのでしょうか
患者さん由来のiPS細胞から、研究したい臓器や組織に近い細胞をつくり、その働きを比較することで、病気が起こる仕組みの仮説を検証できます。田丸院長は東京大学で、脂肪萎縮性糖尿病やミトコンドリアの変異に関わる病気を調べる研究にも携わりました。
この論文で確かめたのは、研究用の細胞を作製する方法です。患者さんの治療効果を調べる臨床試験へ進むには、安全性や有効性を段階を追って確かめる必要があります。病気の仕組みを観察できる研究材料をつくることが、この論文の成果です。





