
くまもと宣言
糖尿病の診療や健康管理の中でよく耳にする「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」とは、過去1〜2か月間の血糖の平均的な状態を反映する重要な指標です。HbA1cは、赤血球内のヘモグロビンがブドウ糖と結びついた割合を示すもので、単なるその日の血糖値ではなく、「どのくらい血糖が高めの状態が続いているか」を知る手がかりになります。
血糖値は食事や運動によって日々変動しますが、HbA1cは長期間の血糖コントロールの指標として使われるため、糖尿病の診断や治療効果の評価に欠かせません。日本糖尿病学会では、HbA1cが6.5%以上であると糖尿病が強く疑われるとし、空腹時血糖や随時血糖と組み合わせて診断します。
目標値は何%?
治療中の方にとって、HbA1cの「目標値」は大切な指標です。日本糖尿病学会と日本糖尿病協会が2008年に発表した「熊本宣言2013」では、合併症予防を目的とした血糖管理の目標が明確に示されました。
具体的には:
- 理想的な目標(合併症予防のため):HbA1c 6.0%未満
- 治療の一般的な目標:HbA1c 7.0%未満
- 高齢者や低血糖リスクが高い方の安全目標:HbA1c 8.0%未満
ただし、目標値は年齢、合併症の有無、低血糖のリスクなどによって個別に設定されるべきです。たとえば高齢の方や認知機能に不安のある方では、無理に厳格な目標にすると、かえって低血糖などのリスクが高まります。そのため、医師と相談しながら、無理のない範囲で適切なHbA1c目標を設定することが大切です。
定期的な測定がカギ
HbA1cは1〜2か月に1度の間隔で測定されることが多く、糖尿病治療の進み具合を客観的に評価するうえで欠かせません。また、予備軍といわれる境界型糖尿病の方にとっても、生活習慣の改善が効果を上げているかを確認するために有用です。
糖尿病は「静かなる病気」とも呼ばれ、自覚症状が出にくいため、知らないうちに進行してしまうことがあります。だからこそ、HbA1cを定期的に測定し、医師とともに健康状態をチェックする習慣が重要です。
まとめ
HbA1cは、糖尿病の診断や治療だけでなく、健康管理の大きな指針となる検査項目です。自分の体の状態を知るための「健康のバロメーター」として、ぜひ定期的にチェックし、無理のない目標設定と生活改善につなげていきましょう。