糖尿病に伴う皮膚疾患と受診の目安

糖尿病のある方では、皮膚が乾燥したり、感染が起きたりするほか、足の感覚や血流の低下から傷が悪化することがあります。ここでは、糖尿病のある方にみられる主な皮膚のトラブルと、受診の目安をご紹介します。似た見た目の病気もあるため、診察で原因を確認します。

足や足指が黒ずむ、足が急に冷たくなる、赤みや腫れが広がる、膿が出る、足の傷とともに発熱する場合は、痛みが乏しくても、当院の開院や通常の予約を待たず、速やかに救急外来などを受診してください。

主な皮膚疾患・皮膚トラブル

皮膚の乾燥・かゆみ

すねや足などが乾燥すると、粉をふいたり、かゆみやひび割れが出たりします。ひび割れやかき傷は感染の入り口になることがあります。洗ったあとはやさしく水気を拭き、乾燥する部分を保湿しましょう。かゆみが続く場合や、ひび割れに赤み・腫れがある場合はご相談ください。

足白癬・爪白癬・皮膚カンジダ症

足白癬(水虫)では足指の間の皮むけやふやけ、爪白癬(爪水虫)では爪の濁りや厚みがみられます。皮膚カンジダ症では、わきや足の付け根など蒸れやすい場所に赤みが出ることがあります。湿疹などでも似た症状が出るため、診察し、必要な検査を検討したうえで治療を選びます。

細菌性皮膚感染症(蜂窩織炎など)

蜂窩織炎(ほうかしきえん)は、細菌が皮膚の深い部分に入り込む感染症です。赤みが広がる、熱を持つ、腫れるなどの症状が出ます。足の傷の周囲で赤みや腫れが広がる、膿が出る、発熱する場合は、痛みが軽くても速やかに医療機関を受診してください。

糖尿病性足潰瘍・壊疽

神経障害で痛みに気づきにくくなると、靴ずれやたこの下の傷を見逃すことがあります。血流が低下していると傷が治りにくく、皮膚の深いところまで傷が及ぶ潰瘍や、組織が傷んで黒くなる壊疽につながることがあります。傷や水ぶくれは早めに相談し、足指が黒ずむ、足が急に冷たくなる場合は速やかに救急外来などを受診してください。

出典 ADA『Standards of Care in Diabetes—2026』第12章 / 日本糖尿病学会「糖尿病性足病変」

シャルコー足(急に赤く腫れて熱を持つ足)

糖尿病による神経障害がある方では、足の骨や関節が傷み、足が急に赤く腫れて熱を持つことがあります。これをシャルコー足といいます。傷が見当たらず、痛みが少ない場合にも起こります。足の形が変わると、一部に圧が集中して潰瘍につながることがあります。感染などでも似た症状が出るため、片足が急に赤く腫れて熱を持つときは、その足に体重をかけず、当日中に医療機関で評価を受けてください。

出典 ADA『Standards of Care in Diabetes—2026』第12章

糖尿病性皮膚症(すねの褐色斑)

すねに小さな丸い茶色の斑点ができることがあります。痛みやかゆみが乏しく、皮膚がわずかにへこんで見えることもあります。典型的な場合は皮膚そのものの治療を要しないことが多いですが、初めて気づいた斑点が広がる、痛む、傷になるときは診察で確認しましょう。

糖尿病性水疱

やけどや靴ずれの心当たりがなくても、足や手に突然、水ぶくれができることがあります。痛みが少ない場合もあります。自分でつぶさず、特に足にできた場合は早めに受診してください。赤みが広がる、膿が出る、発熱する場合は速やかな受診が必要です。

黒色表皮腫

首の後ろやわきなどの皮膚が黒っぽくなり、厚く、ビロードのように感じられることがあります。インスリンが効きにくくなる状態と関連することがあり、血糖の評価が役立つ場合があります。新しく現れた場合や急に広がる場合はご相談ください。

出典 ADA『Standards of Care in Diabetes—2026』第2章 / ADA『Standards of Care in Diabetes—2026』第4章

リポイド類壊死症

すねなどに、中心が黄褐色で薄く見え、周囲に赤みを帯びた斑がゆっくり広がることがある、まれな皮膚疾患です。こすれやけがをきっかけに傷になることがあります。似た見た目の病気もあるため、気になる斑が広がる場合や傷ができた場合は受診してください。

リポイド類壊死症は糖尿病との関連が知られていますが、糖尿病のない方にも生じます。出典 2025年の糖尿病と皮膚症状のレビュー

糖尿病性浮腫性硬化症(首の後ろや背中の皮膚の硬化)

首の後ろや肩、背中の上部の皮膚が、徐々に厚く硬くなるまれな病気です。長期間糖尿病がある方、とくに2型糖尿病の方で報告されています。皮膚がつっぱり、首や肩を動かしにくくなることもあります。硬くなる範囲が広がる、動きにくさがあるときはご相談ください。必要に応じて皮膚科専門医をご紹介します。

出典 2025年の糖尿病と皮膚症状のレビュー / 糖尿病性浮腫性硬化症のレビュー

環状肉芽腫(輪のように並ぶ小さな盛り上がり)

手足などに、肌色や赤みを帯びた小さな盛り上がりが輪のように並ぶことがあります。腕や脚、体幹などに広く現れることもあります。大規模な観察研究では環状肉芽腫のある方に2型糖尿病が多くみられましたが、この研究から因果関係までは分かりません。白癬などでも輪状の皮疹ができるため、広がる、長引く場合は診察で確認します。

出典 2025年の糖尿病と皮膚症状のレビュー / JAMA Dermatologyの環状肉芽腫と2型糖尿病に関するコホート研究

足のひび割れ・たこ・うおのめ・靴ずれ

かかとのひび割れや靴ずれ、たこ・うおのめの下に傷ができることがあります。神経障害があると痛みに気づきにくいため、毎日足裏や指の間を観察しましょう。たこやうおのめを自分で削ったり、巻き爪を深く切ったりせず、出血や水ぶくれ、傷があれば早めにご相談ください。

出典 ADA『Standards of Care in Diabetes—2026』第12章 / 日本糖尿病学会「糖尿病性足病変」

帯状疱疹

糖尿病のある方では発症リスクが高いと報告されています。典型的には体や顔の片側にピリピリした痛みが出て、その後に赤みやまとまった水ぶくれが現れます。抗ウイルス薬は早期の開始が大切です。疑わしい症状があれば早めに受診し、特に目や耳の周りに症状がある場合はその日のうちに医療機関へご相談ください。ADAの第4章では帯状疱疹を予防接種の項目で扱っています。

出典 日本皮膚科学会「帯状疱疹診療ガイドライン2025」 / 糖尿病と帯状疱疹に関するコホート研究 / ADA『Standards of Care in Diabetes—2026』第4章

スキンタッグ(首やわきの小さな突起)

首やわきなどにできる柔らかい突起です。糖尿病やメタボリックシンドロームのある方にもみられます。急に大きくなる、出血する、見た目が変わる場合は診察で確認しましょう。

出典 米国皮膚科学会「スキンタッグ」

発疹性黄色腫

お尻や太ももなどに黄色っぽい小さなぶつぶつが急に多数できる、まれな皮膚病変です。中性脂肪が著しく高い場合にみられ、血糖や脂質を調べるきっかけになります。

出典 米国皮膚科学会「糖尿病と皮膚の徴候」

糖尿病の薬・注射・機器による皮膚トラブル

インスリンなどの注射部位の赤み・しこり

皮下注射のあとに赤み、かゆみ、腫れ、内出血が出ることがあります。インスリンを同じ場所に繰り返し打つと、皮下脂肪が盛り上がったりへこんだりすることがあり、硬いしこりの原因として皮膚アミロイドーシスもあります。こうした部位ではインスリンの吸収が不安定になり、正常な部位に変更したときに低血糖が起こることがあります。しこりに気づいたら、注射部位のずらし方、血糖の確認方法や投与量について処方元にご相談ください。

出典 ADA『Standards of Care in Diabetes—2026』第4章 / ADA『Standards of Care in Diabetes—2026』第9章 / PMDA「インスリン製剤の注射部位に関する安全性情報」

血糖センサー・インスリンポンプによるかぶれ

持続血糖測定器(CGM)やインスリンポンプの装着部位が、粘着剤などの刺激やアレルギーで赤くなったり、かゆくなったりすることがあります。繰り返す場合や赤みが貼付範囲を越えて広がる場合は、機器の種類と装着部位を伝えてご相談ください。

出典 ADA『Standards of Care in Diabetes—2026』第7章

DPP-4阻害薬と水疱性類天疱瘡

DPP-4阻害薬の使用中に、強いかゆみを伴う赤み、張りのある水ぶくれ、ただれが出ることがあります。このような症状があれば、薬の名前が分かるものを持参し、速やかに処方元や皮膚科にご相談ください。

出典 ADA『Standards of Care in Diabetes—2026』第9章 / PMDA「DPP-4阻害薬と類天疱瘡」

SGLT2阻害薬と外陰部の感染

SGLT2阻害薬の使用中に、外陰部の真菌感染症などで、かゆみ・赤み・痛みが出ることがあります。外陰部やその周りに強い痛みや腫れがある、発熱を伴う場合は、まれにフルニエ壊疽などの重い感染症が疑われるため、速やかに医療機関を受診してください。

出典 ADA『Standards of Care in Diabetes—2026』第9章 / PMDA「ジャディアンス患者向医薬品ガイド」

クリニックハロ八王子での診療

開院後は、糖尿病内科とあわせて皮膚や足・爪の状態を診察します。必要に応じて足の感覚や血流、感染の有無を確認し、治療やフットケアをご案内します。皮膚科専門医による精査や処置が必要な場合は、適切な医療機関をご紹介します。

皮膚科・フットケアの診療案内 / 糖尿病内科の診療案内

参考資料

糖尿病の標準診療 ADA『Standards of Care in Diabetes—2026』第2章 / ADA『Standards of Care in Diabetes—2026』第4章 / ADA『Standards of Care in Diabetes—2026』第7章 / ADA『Standards of Care in Diabetes—2026』第9章 / ADA『Standards of Care in Diabetes—2026』第12章

日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」糖尿病性足病変
米国糖尿病学会「Diabetes and Skin Complications」
米国皮膚科学会「Diabetes: 10 warning signs that can appear on your skin」