糖尿病の食事療法:主食を抜くべき?

糖尿病と食事療法

糖尿病と診断されたとき、多くの方がまず気にするのが「食事」です。特に、主食(ご飯、パン、麺など)を抜くべきかどうか悩む方は少なくありません。本記事では、糖尿病と主食の関係について、専門医の視点からわかりやすく解説します。


主食=糖質、でも「悪者」ではありません

主食には炭水化物(糖質)が多く含まれており、血糖値を上げやすい食品です。そのため、「糖尿病だから主食はNG」と思われがちですが、これは誤解です。糖質は体の重要なエネルギー源であり、完全に抜いてしまうと栄養バランスが崩れたり、低血糖を起こすリスクもあります。


主食を抜くリスクとは?

糖質を極端に制限すると、以下のような健康リスクが高まることがあります:

  • エネルギー不足による疲労感や集中力の低下
  • 筋肉量の減少や代謝の低下
  • 低血糖によるめまいやふらつき
  • 脂質やたんぱく質の過剰摂取による腎臓への負担

また、食事制限がストレスとなり、長続きしないダイエットやリバウンドにつながることも少なくありません。


「主食を抜く」より「主食を選ぶ」

大切なのは、主食を抜くことではなく、賢く選ぶことです。血糖値の上昇をゆるやかにする食材や食べ方を取り入れることで、無理なく血糖コントロールが可能になります。

血糖値を上げにくい主食の例:

  • 玄米や雑穀米:食物繊維が多く、GI値(血糖上昇指数)が低い
  • 全粒粉パンやライ麦パン:精製度が低く、ゆっくり吸収される
  • そば(十割そば):小麦製品より血糖値が上がりにくい

食べ方の工夫:

  • 主食を食べる前に、野菜やたんぱく質(肉・魚・豆類)を先に食べる
  • よく噛んで、ゆっくり食べる
  • 同じ量でも、白米より玄米を選ぶことで血糖の急上昇を抑えられる

まとめ:主食は「敵」ではなく「味方」に

糖尿病の食事療法において、主食を完全に抜く必要はありません。正しい知識で主食を選び、食べ方を工夫することが、健康的で続けやすい血糖管理につながります。ご自身に合った食事療法を見つけるためにも、医師や管理栄養士と相談しながら取り組むことをおすすめします。


目次

よくある質問(Q&A)

Q. 糖尿病でも白米を食べていいの?
A. 適量であれば白米も問題ありません。ただし、玄米や雑穀米に置き換えると血糖コントロールしやすくなります。

Q. 糖質ゼロの食事を続けても大丈夫?
A. 長期的な糖質ゼロ食はおすすめできません。エネルギー不足や栄養バランスの乱れが起こる可能性があります。

Q. 食事で血糖値を下げることはできる?
A. 食べ方や食材選びによって、食後の血糖値上昇をゆるやかにすることは可能です。

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この記事を書いた人

はごろも内科小児科
院長 田丸新一(Shinichi Tamaru)
医師、医学博士

2004年自治医科大学医学部医学科卒業。高知県県立中央病院、国保沖の島へき地診療所所長、本山町国保嶺北中央病院内科医長を経て、東京医科大学病院 糖尿病・代謝・内分泌内科助教。東京医科大学大学院医学研究科社会人大学院入学。東京大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科。二次性高血圧の機械学習モデルでの研究により医学博士取得。東京北医療センター糖尿病内科、山王病院 糖尿病内分泌代謝内科副部長、東京医科大学病院糖尿病・代謝・内分泌内科助教を歴任。医学の研究も積極的に行ってきた。


日本内科学会 内科認定医、総合内科専門医・指導医
日本糖尿病学会専門医・指導医
日本内分泌学会 内分泌代謝内科専門医・指導医
日本肥満学会所属
東京都難病指定医、東京都小児慢性特定疾病指定医
厚生労働省臨床研修指導医講習修了
緩和ケア研修会終了

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